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「大学入試選抜における英語試験のあり方をめぐって」シンポジウムの覚え書き

「大学入試選抜における英語試験のあり方をめぐって」というシンポジウムに行ってきました。司会は、南風原朝和さんで、講演者は文科省の山田泰造さん、前国大協委員長の片峰茂さん、ベネッセの込山智之さん、京都工繊大の羽藤由美さん、東大准教授の阿部公彦さん、全国高校学校長協会長の宮本久也さん(敬称略)というバランスのとれたメンバーでした。阿部氏は「史上最悪の英語政策」というタイトルの本を出されており、ウソだらけの「4技能看板」という副題をつけておられます。阿部氏が問題としている当の文科省だけではなく、「業者ありきの改革」という点で疑問を投げかけている対象の一つである業者(今回はベネッセ)も同席するという点でどういうやりとりになるのか興味津々でした。
4時間に及ぶとても充実したシンポジウムでしたが、ここでは、シンポジウムを要約するのではなく、自分にとって興味深かった点について、自分の備忘録として残しておこうと思います。なお、羽藤氏(「今回の英語入試改革はあまりに拙速で無謀だ」というスタンス)と阿部氏はスタンスを共有するところが多いので、両者が述べていることはどちらかの言葉として述べることにします。
業者テスト導入の問題点
大学入試の第1次選抜を業者に丸投げしてよいのか。
1 そもそも「業者ありき」だったのではないのか(羽藤氏)。
この指摘は阿部氏の著作にくわしい。
「残念ながら、今回の「4技能」という看板にはほとんど実態がありません。調べれば調べるほど、今回の政策がいかに無根拠に進められているかが明白になります。それどころか、このほんとうの目的は一部業者のための経済効果にあるようにさえ見える。しかも、この政策のために、肝心の英語力は今よりもっと低下する可能性がきわめて高いのです。」(「史上最悪の英語政策」以下引用は同書)
さらに、今回の政策を決めた「英語教育の在り方に関する有識者会議」のもとに、「平成27年度 英語力評価及び縫う学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会」がつくられたのですが、そこには外部試験を運営する利害関係者の名前がずらりと並んでいます。(この中には今回参加されておられるベネッセの込山さんの名前もあります)阿部氏の言葉を引用すると、「入試に外部試験を導入すべきかどうかを話し合う会議で、外部試験業者の方々がこの案を推進するのはあたりまえではないでしょうか。」
2 外部試験について、十分な検証がなされていない
有識者会議では、外部試験を導入するとどういいのか、という議論がまったくなされていない。阿部氏によると、「そもそも本来は診断テストとして使われている業者テストを、何十万人もの生徒が受験する一斉試験に転用するという考え方には根本的な間違いがあります。」
何の検証もないまま、ともかく急げ、ともかく変化だ、改革だという声が強いというのが実態だ。
国立大学協会のアンケート 「国立大学としては、新テストの枠組みにおける5教科7科目の位置づけとして認定試験を「一般選抜」の全受験生に課すとともに、平成35年度までは、センター試験の新テストにおいて実施される英語試験を併せて課すこと」という方針 (案)に対する意見について。「賛同」「概ね賛同」「意見なし」が67%、「その他」33%と発表されている。一方、全国普通科校長会大学入試研究委員会調査のアンケートでは、民間の検定試験と高校の学習指導要領との整合性について、新たな検定試験で1本化という回答が60.6%だった。この差はどこから生じたのか、と司会の南風原氏がディスカッションの場で話題にとりあげた。前者のアンケートについて羽藤氏は「とても急な回答を求められたので、教員たちが話し合う時間もなかった。私自身そのようなアンケートの存在を知らなかったのであとで調べた。また、アンケートに反対という回答の選択肢がなかった。」と言っており、それについて国大協側は「受験生に負担をかけないようにとにかく早く先へ進める必要があった」というようなよくわからない回答をした。拙速であることには間違いないだろう。
宮本氏は「東京都は高校入試でスピーキングを導入し、自前で試験を作ろうとしている。一方大学入試においてはセンター試験では2技能しか問うことはできないと決めつけ、4技能試験を自前で作ることを放棄してしまっているが、センター試験で4技能を問えるように努力すべきではないか」という趣旨のことを述べ、さらに「大学入試は高校での学びの評価成果を評価するものであるべきであり、センター試験的な形を継続的に活用するべきだ」と言う意見を述べた。羽藤氏も、テストの1本化、国の管理下の運営が不可欠だとしている。羽藤氏はその上で、「多様性を言うなら、個別試験は各大学に任せてください」と締めくくっている。

3 外部試験導入に伴う懸念   公正、公平の担保
① まず構成概念(何を測るか)が異なるテストを併用して、むりやりCEFRに合わせようとしているが、正当なスコア対照はできない。(羽藤氏)
  (これに関する質疑応答 複数の業者のテストを一つの評価基準に合わせることは可能なのか。つまり、何を測るかが異なるテストを並べることに無理があるのではないのか。(羽藤氏)⇒生徒が自分の目的と適正に合わせて受けるテストを選択することができるのはメリットだ(山田氏)⇒それは高校生の段階で現実的に厳しいのではないか(羽藤氏))
実際のところ、業者ごとに試験方式が全く異なるので、どの業者テストを選ぶか、は重要な選択になる。自分はどのテストだと一番高い評価を得ることになるかを高校生が判断するのは難しいだろうし、どれかが有利だと喧伝されると大勢の受験生はその試験になだれ込むことになるだろう。そういう点で、業者側が、自分たちのテスト活用に向けて何らかの誘導を行う危険性もあるだろうと思う。
② 業者はテストの品質保持のために、関連情報を秘密にすることが許されている。入試に使うならば、過去問はすべて無償で公開の必要があるだろうが、それは可能なのか(阿部氏)。現在は、テスト問題の持ち出しを禁止したり、過去問として販売したりしている業者もある。もし、公開されないならば、試験情報が一部対策業者に偏る可能性もあり(なんらかのルートで情報を集め、一部の受験生に教えるという事態が考えられる。現にTOEICについては、どんな問題が出たかを教え合うサイトもある)不公平な事態が予測される。
③  さらに、テスト作成業者と対策サポート業者が一体化しているという問題もある(羽藤氏)業者テストは対策をとればとるほど得点が上がる性質のものなので、一部の対策業者に受験生のお金が吸い込まれていくことになる。
④ 問題漏洩の危険性。TEAPなどは面接委員を公開募集しており、入試作問者、採点者、運営に関わるものがそこここにいる。国内外で入試運営に関わる膨大な人数の管理は困難(羽藤氏)
⑤ 家庭の経済力
 複数回受験すれば得点は上がる(英語力と言うよりは慣れによって点数が上がるタイプの試験が多い)ので、何回も受けられる環境にいる生徒が有利になり、経済格差が反映されやすい。全国普通科校長会大学入試研究委員会調査では、認定試験の受験料について、求められているのは1000円から3000円が69.8% 3000円から5000円が27.9%であり、家庭の経済力の影響が大きい(宮本氏)
⑥ 学力の向上
民間試験対策のための英語学習で英語力が上がるのか。阿部氏の著作には「より根本的な問題は、回数をたくさん受ければ点数が簡単に上がるような試験を入試として設定することで、どうして英語力があがるなどという理屈を立てられるのかということです。」と書かれている。有識者会議では、それについての議論はまったくなされていない。私としては高校の英語の授業が、業者テストの対策になってしまうのはまずいだろうと思う。指導要領の制約の下、高校の先生方はそれぞれに工夫して授業を組み立てておられる(「英語教師は楽しい」(ひつじ書房)には、様々な先生の授業例も上がっていて、参考になる)が、業者テストへの対策を求められると授業の自由度は一層制約されることになるだろう。
⑦ なぜ英語だけ外部試験なのか?(宮本氏)
実施させたい側の言い分としては、スピーキングテストを作ることはできないから、という一言につきる。
外部試験導入については、私自身は、「英語を話せるようになるとかっこいいなあ」「これからのグローバル時代、英語を話せないと」という風潮に、業者が利益拡大のチャンスを見いだした結果にほかならないと考えている。幼児英語教育なども同様だ。
スピーキングには、スピーキング以外の要素が重要だということを見忘れ、ただスピーキングを練習すればなんとかなる、という愚かしい主張もよく耳にする。(スピーキングにはどういう要素が必要か、についてはは阿部氏の著作に詳しい)
また、ほかの科目と区別して、英語を特別な科目として扱う理由は私には思い至らない。
私自身は、業者テストを利用するにしても、英検3級レベルの4技能試験でボーダーを設定して、それをクリアーしているならば、現代文(と小論文)以外はすべて選択科目にしてもいいだろうと考えている。もちろん選択科目としての英語入試のレベルは各大学の決定に任せるべきだ。
現代文については、「ロボットは東大に入れるか(東ロボ)」プロジェクトのAI研究チームの報告を見るとよくわかるように、日本の生徒の日本語読解力は危機的状況だといえる。センター長の新井紀子さんによると、キーワードとパターンだけで文章を処理しようとする子どもが多く(AIの得意分野だ)、公立中学の生徒対象に調査した結果、50%の生徒が教科書の内容を読み取れておらず、20%は基礎的な読解もできていない、という。基本的読解力が欠けていると社会に適応すること自体が困難になるだろう。英語を話せるようになる以上に不可欠なことは、基本的な日本語を読み取れることだ。
⑧ 現在の高校生の英語力の現実
2015年に行われた文科省による英語力調査結果(国公立約500校、訳9万人の高校3年生を対象)によると、読む、聞く、話す、書く、のどの技能においても、CEFRの段階で判断すると、下の二つの段階A1とA2に97%から99%が入ってしまう。これでは、個人差を見ることができず、共通テストとして選抜の目的には使えない。(参考資料NHK視点・論点「大学入学共通テストの問題点」より)

スピーキング試験導入について
改革促進派の主張は、スピーキングの入試への導入につきると言っていいだろう。「スピーキング」が魔法の呪文となっているわけだ。もちろん、スピーキングはとても大切だと私も思うが、入試に導入する際には留意するべき点が多い。
阿部氏は「スピーキングテストでスピーキング力が落ちるのはなぜか」という講演タイトルにする予定だったが、もう少し穏やかにするようにという要請のもと、「スピーキングテストでスピーキング力は上がるか?」というタイトルに変更した、という。あまり、変わりはないような…
 阿部氏は「試験は力を測るものであって、ない力は測れない」と、辛辣な表現をしておられたが、確かに現在の状態で多くの高校生のスピーキング力は、小学生の会話レベルのことしか話せないレベルだと言える。それならば、中高でスピーキングの授業を増やせばよい、と考えられるだろう。しかし、英語の授業数が限られている以上、スピーキングを増やすと、ライティングやリーディング、リスニングの授業を減らさざるを得なくなる。そのことによって、生徒たちの英語力はますます落ちることになる。阿部氏は「単語を覚えるとか、構文を確認するといった肝心の基礎訓練がおろそかになり、単語や熟語、文法などの適切な知識がない人がひたすらににこやかに言葉をたれ流すという状況をつくるだけです」とまで言い切っている。(シンポジウム資料)
確かに、大学で英語を使う必要、さらにはグローバル時代にビジネスで英語を使う必要があるとすれば、文書を扱うこと、つまり読み書きの方が重視されるというのは自明のことだ。阿部氏は、「グローバル化=英語ぺらぺら」などという図式が嘘だとみなわかっているが、英語市場のバブルを引き起こすにはこうしたキャッチフレーズが好都合なのだと述べている。
私自身は、「自分が興味を持つもの、ことについて」といった程度のスピーキングテストは導入したほうがよいと考えている。高校の授業時間で基本を重視しつつスピーキングをも扱うならば、現状、そのあたりが限界だろう。ただし、スピーキングテストを問題なく実施するには相当の困難が伴うはずである。
スピーキングテスト実施の困難さ
① 公正なスピーキング力測定の困難さ
羽藤氏は京都工繊大で、スピーキングテストを開発、運営してきたが、「やり方次第で、大きな正の波及効果を期待できる、という手応え」を得ている。課題の与え方、評価基準、評価プロセス、採点者によるスコア一致という課題をクリアーするには莫大なコスト(人的資源、時間)が必要だとなる。羽藤氏はスピーキングの費用対効果の悪さを指摘し、受験料を下げると採点の質が維持できなくなるという点も指摘している。
② 公平な試験実施の困難さ
受験環境の不公平さの問題。他の受験生の音声回答が妨げになる、あるいはそのまねが可能な環境が生じやすい。羽藤氏は自校のスピーキングテストでのアンケートをとっているが、全国規模で行われる場合、受験環境格差は大きくなるだろう。しかし、これは実施の仕方によって解決可能な問題であるかもしれない。
  また、羽藤氏はどれほど注意しても、トラブルは不可避だ、という点もあげている、これは現在のリスニングも同様な状況なので、できる限りトラブルが起こりにくいようにする、ということしかないだろうが、受験生側がどこまで許容
できるかが問題だ。
一方、阿部氏は、発声を伴う試験を一律に課すことの弊害について言及している。発声を伴うテストはメンタルな要素も絡みやすい、また、自閉症や吃音、機音障害、あるいはそのグレーゾーンにいる人たちも多いのではないか、という指摘も行っている。
   リスニングは努力が報われやすいが、スピーキングは努力が報われにくい分野であることと現実の生徒の英語力を考慮すると、一律にスピーキングを課す必要はなく、スピーキングは選択性でいいのではないか、と阿部氏は提言している。
大学入試である以上、複雑な文章を読む能力を身につける方が、内容のない小学生レベルの英語を発話できるようになるよりも、大学の勉強において役立つだろう、と。大学入学後にスピーキング力をつけるのでも、遅すぎるということはないだろう、むしろ、様々な問題意識が成熟し、真に発言したいことが出てくるようになる大学レベルで思い切り鍛える方が有効だ、という言葉にはうなずかされた。

自分の興味を引いた点、さらに少しだけ自分の考えを加えて、まとめてみました。英語教育においては、4技能をそれぞれに独立したものとして扱うのではなく、連携して全体として英語力を高めるものにするべきだというのは言うまでもないことだと思います。しかし、入学試験をどういう形にするか、ということは少し距離をとって冷静に現実的に考えた方がいいのではないか、とも思います。
英語教育自体のあり方についても、AIの進歩も射程に入れつつ、これからの時代に合うような教育方法に改革していく必要があるだろう、と思います。このことについては、自分自身、考えをまとめている最中です。自動翻訳が可能になってくると、真っ先に不要になるのは日常的、定型的な会話でしょう。しかし、それ以上のレベルの会話を望むのであれば、日本語での読解力、思考力、論理的推論力をベースにリスニング、スピーキングを鍛える必要があります。何にもましてまずは、国語力をつけるべきだ、というのが今の段階における私の結論です。外国語学習の意義についてはいつかまた。
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英文法の核 質問への返答1 固有名詞と定冠詞

固有名詞には定冠詞をつけない、という記述に対して、固有名詞にtheがつくことがあるではないか、という質問に対する返答です。
学校の副教材にはtheがつく固有名詞という記述で、①固有名詞+普通名詞 川、運が、海、海峡、大きな湾、半島砂漠、ただし山、湖、島、小さな湾にはつかない ② 複数形の固有名詞 ③公共の乗り物の名前(ただし非常に有名なもののみ)④公共の建物の名前⑤新聞の名前 雑誌にはつくものとつかないものがある、と書いてあります

そりゃあ、確かにそうなのだけど、これをすべて暗記するというのも大変なことだ。まあ、とりあえず、ざっくりと理解してから違和感があるものだけは仕方がないと思って覚えるようにするほうがリーズナブルでしょう。

固有名詞に定冠詞というようにではなく、the をつけることによって固有名詞化していると考えてみましょう。
asahi ➡︎朝日、たいようのこと?➡︎いや、今話題にしてるのは、あの朝日のことだよ、わかるでしょ➡︎the Asahi 朝日新聞
Browns➡︎ブラウンさんたち?➡︎あのブラウンさんたちのことね➡︎the Browns 君も知っているブラウンさんたち、つまりあの家族のことね
United States➡︎州を統合したもの?それどこ?➡︎決まってんじゃん、アメリカに➡︎the United States
タイタニック➡︎なんのこと?タイタニックって言えば、あれだよ、タイタニック号に決まってるじゃん、という具合です。
だから有名ではない船にはつかないのだろう、と思えますね。
例えば川だったら、ミシシッピの川➡︎それどの川、ミシシッピ州には川いっぱいあるのじゃないの?➡︎いや、ミシシッピの川といえば君もわかるでしょ、合衆国で一番長い川なんだから⇒The Misssissippi River)
こういう感じでthe をつけるわけだから、湾であるならば大きな湾じゃないと固有名詞化しないはずだ、と理解できますね。
ホテルの名前などもそうですね。地名や人名や花の名前などをホテル名にしている場合、例えば「今、この状況でアトランタといえばアトランタホテルを指してるってわかるでしょ」➡︎the をつけて固有名詞化

理屈ゼロのまま、その本のルールを、暗記しろといわれたらかなりつらいよね。私だって大きな湾は定冠詞がつくが小さな湾はつかない、とか言われたら大きい小さいをどこで分けるんだ、と思って頭が混乱してしまいます。この辺りの説明も書いておけばよかったですね。

過度な単純化と有効性について


「過度な単純化」の有害性については「英文法の核」の中でも取り上げました。
そこでは「他動詞はほかに働きかける動詞です⇒具体例⇒わかりやすいですよね。」というような記述について、状態動詞への意識が抜けていることを指摘しました。He resembles his father.は他動詞ですが、彼が父親に働きかけているわけではない、と。これは普通に見かける文なので例外扱いはできません。過度な単純化によって理解した気になっていると、このような普通の文に対処できなくなるので、過度な単純化は学習者にとって「わかりやすい」というよりはむしろ有害なのだと書きました。
 自動詞と他動詞については本書0章で説明してあります。

 また、ツイッターで「現在形とはいつでもいえることを表す」のではないか、という質問がありました。この過度な単純化はI am hungry.という一文を瞬間考えるだけで打ち砕かれます。「私はいつでも空腹」なのか?

 ここでも動作動詞と状態動詞の区分があれば、動作動詞の現在形は現在を含めた一定期間以上にわたって言えること、あるいは確定的な未来を表し、状態動詞の現在形は現在を含めた一定期間以上にわたって言えることと説明がつきます。(一定期間は長くても短くてもよい。参考書ではShe is pretty.この先もしばらくはprettyというイラストを入れました)
 
 少し回りくどいように思えますがこのあたりが適切な説明の落としどころかと思います。「現在形とはいつでもいえることを表す」と書いている参考書があるとすればやはりそれは有害なものだと言えるでしょう。

 また、これまで自分が学んできた、あるいは教えてきた説明と異なる説明を目にして「わかりにくい」という人もいました。「わかろう」という視点で読んでいないからでしょう。それは教職者に多いようです。教師は往々にしてこれまでの自分の教え方に固執してしまいがちなものです。「変化」できないものは生き残れないのだとダーウインも言っていますが、自分の判断をさしおいて、とりあえず素直に受け入れてみる、その上で自分の考え方や教え方を改善していく、という姿勢が教える側に必要だと思います。これも「これまで」だけを基準にしてものを判断するという過度な単純化だと言えるでしょう。言語自体も常に変化し続けるものですから、言語を教えるものは常にアップデートし続ける必要があります。

 ところが、「過度な」という言葉を使うからには「適度な」を想定する必要があります。
たとえば小学生に英語を教える際に「現在形とは」という教え方をするとすれば、その段階で「過度」だということになります。その段階ではパターンの反復によって無意識に体得させることの方が多いはずだからです。

 実はこの「適度」が一番難しいところなのです。どこまで説明するか、何は説明から省くか。大学受験生に講義をする場合は「何を教えないようにするか」という制御があってこそ有効性の高い講義となります。教える側は、ついいろいろと教えたくなりますが、情報が多すぎると「核」がぼやけてしまうことになりますし、消化不良を起こしかねません。「適度」とは、という問いは対象、状況によって答えが変わり続けるものなので状況を判断し続ける姿勢が必要になるのです。

 話は変わりますが、「論理的に思考し論理的に読み書きすること」はとても重要なことで、特に日本人の思考パターンと異なる要素が多いので私の講義では徹底的に「論理性」にこだわります。しかし、論理性というのはいわば一つの思考の型であって、共有する人の数が多く、また科学的にも有効性が高いから重視されているものにすぎません。そこでは線形に進行することが求められますが、文字を持たない言語を使う人たちは線形に進行する思考はとりません。「進行」しないでそのままに対象(環境や他の人)とダイレクトに接しているのです。(「声の文化と文字の文化」と「ピダハン」はとても面白いです)さらにいうと「非線形」に進行する思考もあり得ます。線形にするためにそぎ落とすノイズの部分が実は重要な要素であって、近代合理主義のような還元主義的思考では説明不能な現象もあるというわけです。(「非線形科学」という新書もとても面白いです。)
 ですから「論理的に考えろ」という言葉自体も状況次第では「過度な単純化」と言えるのです。しかし、論理の枠に収まらない現象を説明するためにも、論理の枠内に収まる言語が必要になりますから、「論理的に思考する」ことは有効性の高い手段となります。
 「適度に単純化」する手段をとって理解しながら、その「単純化された理解」の外部が常に存在しているのだと意識することが必要なのでしょう。
 





参考書紹介と使用例

西きょうじ参考書を整理しておきます。

「英文読解入門 基本はここだ」(代々木ライブラリー)
   読解のための基本文法・構文に焦点を当てて丁寧に解説。
   偏差値50位から読めて、偏差値60以上の人も基本を再確認できる。
   読解の土台を築くための入門書。

「リーディング&ボキャブラリー」(文英堂)
   高校入試レベルの文章からスタートして読解力と語彙力をつけるための参考書。
   偏差値50前後から55を対象としており、「英文読解入門」でつかんだ基本を易しい文章の読解練習によって定着させる。
   CDを聞いて内容が理解できるまで繰り返すことでリスニング力も育成しよう。

「図解 英文読解講義の実況中継」(語学春秋社)
   これも高校入試レベルの文章からスタートしてセンター試験レベルまでの文章を読む偏差値50前後から55を対象として参考書で、話し言葉で説明しているので英語が苦手な人も読み進みやすい。「英文読解入門」でつかんだ基本が読解練習の中で繰り返される参考書。

「英文速読のナビゲーター」(研究社)
   1文1文は読めるようになってきたが長文になると意味がわからなくなることが多いという段階にいる受験生は、この本で長文アレルギーを脱出しよう。文と文との関係性への意識付けと長文の読み進め方を、中堅大学のレベルから早稲田のレベルまで徐々にレベルアップしていく。偏差値55から65前後までを対象としていて、この本を読みこんで現代文の得点が上がったという声も多い。

「ポレポレ英文読解プロセス50」(代々木ライブラリー)
   構文把握完成のための参考書。偏差値60前後から始めると効果的。55を超えていないと挫折しやすい。
   この薄い本を何度も繰り返すことで構文把握に関してはほとんどの英文が類題となるはずである。
   20年以上にわたるベストセラーであり、 上位受験生のバイブルと称されることもある。

「情報構造で読む英語長文」(代々木ライブラリー)
   「英文速読のナビゲーター」をレベルアップした長文読解の参考書。
   偏差値60前後から始めると効果的。ロジカルに英文の情報を受け取る技術を身に付けることで長文を得点源にすることができる。
   最難関大の長文を使って抽象度が高い文章ほどロジカルなフレームに収まるものだということを示しており、最難関校受験生の高い支持を受けている。
「英文法の核」(東進ブックス)
     「よめる、わかる、つかえる」参考書として、ごく基本から丁寧に説明しており、ルール丸暗記、知識列挙型の参考書とは異なり、うえで文法を体得する構成となっている。読解、作文の土台となるものなので、しっかり読み込んでほしい。
   受験参考書としての網羅性もあり、これ一冊を繰り返すと、受験に必要な文法はすべて身につくことになる。
   また、基本例文500のCDを使って例文を繰り返し音読することで知識を定着させることができる。
   偏差値50前後から使うことができ、70レベルの受験生もこれを読むことでこれまで何となくわかった気になっていたことを基本からわかり直し、また実はあやふやだった部分をしっかり強化することができる。受験生に限らず、広範な英語学習者に活用してほしい参考書。

「英文法の核 問題演習編」(東進ブックス)
  「英文法の核」でつかんだ知識を問題を通して確認する。
  400題の問題と「英文法の核」とがっちりリンクする解説で「英文法の核」を完成させよう。理解を伴う問題演習です。
  知識は問題によるアウトプットなしには定着しないという調査結果があります。かといって、ネクステを
  理解を伴わぬままどんどんやる、という勉強では時間を浪費するばかりです。

ダンスde英単語」(ゴマ書房新書)(監修)
 
 これは、ターゲットやシステム英単語である程度の語彙力をつけた人が使うと語彙力が一気に増える。
 語根と接頭辞 接尾辞で語をまとめて覚えられるし、未知の語の意味推測もできるようになる。
 CDの音声が人間にとって覚えやすいピッチで音楽として流れているので聞いているうちに自然に単語が頭に残るようになる。 このような音声CDは他の単語本には見られない。

「東大への英語塾」(語学春秋社)
これは東大の過去問演習に入る前にやっておいてほしい本。東大の出題意図などを説明しており、東大入試に対する勉強の仕方を明確にすることを目的としている。長文のテーマの一貫性など(ダニエル・カーネマンの出題など予想通りの結果となっています)を説明したページなどもあります。

参考書の利用例

 偏差値50前後⇒ 60へ
  ① 「英文読解入門」
  ② 「リーディング&ボキャブラリ―」
    あるいは「図解 英文読解講義の実況中継」
  ③ 「英文法の核」
  ④ 「英文法の核」(問題演習編)
  ⑤ 「英文速読のナビゲーター」

  進行の仕方
  ①⇒ ② ⇒ ⑤
     ③ / ④ (②⇒⑤と並行して③/④を行う なお③と④は単元ごとに③⇒④へ) 
①から入りにくい人は「図解」から入ると話し口調なので抵抗なく基本を身に付けられます。
その場合「図解」⇒「入門」⇒「リーディング&ボキャブラリー」で読解の基本を作り上げましょう

 偏差値60前後⇒ 70~
  ① 「英文読解入門」(一気に読み通して基本が抜けていないか確認しよう)
  ② 「英文速読のナビゲーター」
  ③ 「ポレポレ英文読解プロセス50」
  ④ 「情報構造で読む英語長文」
  ⑤ 「英文法の核」
  ⑥ 「英文法の核 問題演習編」

  進行の仕方
  ① ⇒ ② ⇒ ③ ⇒ ④
      ⑤ / ⑥ (②⇒④と並行して⑤/⑥を行う)


(参考) 東進ハイスクール・東進衛星予備校の講義

語順 基本文法
 「飛翔への英語表現 必修編
 高校入試を突破したレベルから始める基本講座。主語とは何か、から始めSVOの語順の徹底、さらには文法単元の基本解説と基本例文の習得を目指す講座。例文はほとんどが中学の教科書レベルだが、いざ書いてみると意外に書けないもの。ごく短い文を瞬間に発することがスピーキングの土台となる、ということで、毎回多くの文を書く練習を積み重ねて、大学受験の勉強をスタートするためのしっかりとした土台を作ります。中学3年生くらいから受講可能な講座です。「英文読解入門」と並行して主語や動詞の役割などをつかむところから始めましょう。
 
 読解 「飛翔への英文読解 標準偏」(偏差値50前後対象⇒60へ)基本的な短文の読み方からセンター、私立中堅までの長文読解を扱う講座。 part1で「英文読解入門」を利用するとより効果的 さらに「リーディング&ボキャブラリー」で易しい文章をたくさん読んで基本ルールを無意識化してしまいたい。特にセンターで得点が取れない人は、「リーディング&ボキャブラリー」の活用によって語彙力をつけ易しい文章ならばスピードを上げて読めるようにしましょう。
part2では「英文速読のナビゲーター」を一通り読んで長文の読み方を習得しましょう。英語嫌いの人は「図解 英文読解講義の実況中継」から始めましょう。

   
⇒「飛翔への英文読解 応用編」(偏差値60前後対象⇒70へ) 出発時点で「入門」レベルの知識が体得されている必要がある。 part1で「ポレポレ」part2で「ナビゲーター」「情報構造」を利用するとより効果的。この講座で最難関を除くほとんどの大学の読解対策は十分である。
  
 ⇒「飛翔への英文読解 発展編」 (偏差値65⇒最難関大学へ)」 応用編終了レベルの力がついていることを前提とする。 「ポレポレ」 「情報構造」を利用するとより効果的
この講座で私立最難関、国立最難関の読解対策は終了する。あとは志望校の過去問を行えば完了。
  
  文法「ダイナミック英文法講義」(偏差値55前後~70対象⇒文法完成へ) 文法の基本から入試必要事項をスピーディーに解説しつくす講座です。「英文法の核」をさらに絞り込んだ臨場感のある講義、「英文法の核」で講義を再確認し、さらに裾野を広げ、「英文法の核」演習編でアウトプットを行うとよいでしょう。アウトプットなしには知識は定着しません。数回分ごとにまとめて復習することも重要です。人は忘れるようにできているものなので、繰り返して同じものに触れることが重要なのです。

京大英語 」(2016年冬開講予定) もちろん京大合格を目指す受験生対象。京大の問題を中心として講義しますが、自由英作や内容記述も扱い、入試傾向が変わりつつある京大入試に対応しきれるようになっています。出発点で応用編終了レベルの読解力があることが前提、同時並行でもかまわないので「英文法の核」で読解、作文に使える文法を習得する必要がある。 「ポレポレ」「情報構造」を利用するとより効果的





















ポレポレの説明追加

ポレポレ例題4についての異論に答えておきます。
これは構文がかなり難しい文なのでポレポレでの説明は構文に焦点を当てていますが、
文章として内容を読みとることがゴールです。

enabling~を私はcareful observation and experimentを修飾するもの記述していますが、
これはscienceを主語とする分詞構文ではないかという異論です。

 まず、論説文で、コンマのない分詞構文が結果を付加することはほとんどありません。
 
 次に英語の文体に敏感であれば、このがっちりした名詞のかたまりを中心として展開する文体中に、コンマなしの分詞構文は出現しないだろうと感じ取り、分詞構文の可能性は初めから考慮しません。
 
 しかし、そのように文体を感じ取ることは難しいと思われますから、情報の展開をたどって説明します。

 情報を時系列に従って以下のように整理してみます。3色に分けていますが、同じ色は同じ内容を表していると考えてください。
うわ、ブログでは色が反映されない。仕方ない、下線と太字と斜め字で区別しますね。
 
 英文では後置修飾の場合には特に情報が時系列と異なる順序で現れますから、混乱した時には時系列で整理してみると理解しやすくなります。

careful observation and experiment of existence
different experiences をconnect するtheories
scienceの土台

regularities reveal laws that govern the behavior of matter and forces

this approach の中心 evidenceと矛盾⇒scientisttheoryをabandon

このように情報を整理するととてもわかりやすくなります。
分詞構文と考えると情報の時系列がおかしくなりロジカルではなくなります。

(最終文だけ見ても、abandonとはもともともっていたものを捨てるわけだから、scientistはtheoryを持っていることになります。
すると、enablingからをscienceにかけた science⇒theoriesを可能にする、という解釈では 矛盾が生じることになります)
(evidenceは理論上の証拠ではなく、表に現れた証拠(事象)であってproofとは異なるものです)

文を独立させて自分の思考で判断しようとするのではなく、書き手がどう書いているかを求めてロジックをたどる、という読み方
が重要です。
 
とはいえ、1つの文に対してじっくり考えていろいろ試行錯誤してみる、ということは思考訓練としてとてもよいことだと思います。

プロフィール

西きょうじ

Author:西きょうじ
予備校講師歴も30年以上になりました。いろいろなことがありましたが、様々な方向へと越境しつつ自分を更新していきたいと思っています。

参考書「英文読解入門基本はここだ」「ポレポレ英文読解プロセス50」「情報構造で読む英語長文」「リーディング&ボキャブラリー」「英文速読のナビゲーター」「英文の核」「英文法の核問題演習編」
一般書「踊らされるな、自ら踊れ」「越境へ」(共著)「仕事のエッセンス」「そもそも」「星の王子様さまを英語で読もう」

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