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英文法が重要だという実感を持たせるために(「あ、ブスがくる!」)

文を読み書きする際に文法がベースになるということはいうまでもないことなのですが、文法を教える授業は退屈なものになりがちです。それは文法習得のために文法を教えようとしてしまいがちだからです。教育再生会議では、リスニングやスピーキングにおいても文法が重要だということさえ否定して、文法よりも英会話だという論調さえありますが、愚の骨頂と言えるでしょう。昔に習った文法習得のための無味乾燥な文法ルール丸暗記の授業についていけずにトラウマを抱えてしまった人は気の毒ではありますが、だからといって現在の教科書さえ見ないで英語教育に大きな発言力を持ってしまっているのは困ったものです

受験生の側でも文法というのは文法問題を解くために暗記するものだ、と考えてしまっている生徒や、パターン化された問題集を解いておけば文法問題は何とかなる、と考えている生徒が多くいます。とくに半端にできる層は、後者のような考え方をして文法は自分でできるから読解の授業を選択する、という傾向があります。

実際のところ、文法はいわゆる文法問題で問われないもっと根底的なところこそが重要なのです。

次の1文を考えてみましょう。「英文読解入門」という私の著書で取り上げている例文です。これは基本的な参考書ですがかなりできる生徒にも是非一読してほしい参考書です。

A bus coming from this direction goes to the station.

とても簡単な文ですが、実はこの文を正しく理解するためには多くの文法知識が必要なのです。

まずcoming from this directionがbusを修飾していて、busが主語であり、goesが文の動詞として機能しているということですね。

次に名詞を修飾している~ing部分の解釈です。
~ingが名詞を修飾しているときには「~している」と訳す、というように機械的に暗記しているようではこの文は正確に読めません。

~ingが名詞を修飾している場合、には~部分の動詞が状態か動作かによって解釈が変わってきます。
 状態を表している(ある一定期間継続する、というようにとらえて結構です)動詞の場合、~ingはそのまま状態を表します。つまり a girl belonging to the clubというフレーズであれば 
a girl who belongs to the clubと同じ意味になります。
 
ここでも、状態動詞は~ingを取らないと妙な暗記をしている生徒は混乱してしまうようです。進行形にできないということと~ingにできないということは同じではないということが理解できていないからです。(進行形は動的で不安定なイメージを持つので状態動詞のもつ安定的なイメージと矛盾するからです)
 
次に動作を表している動詞の場合、~ing部分は進行(その時一時的にしている最中というイメージ)を表します。ところが動作動詞が習慣として使われる場合(たとえば、He gets up early.「彼は早起きだ」は一回性のことではなく習慣を表していますね)は状態動詞同様のことになります。
 
ですからbus coming from this directionは
 bus which is coming from this direction「今こちらから来つつあるバス」という解釈と
 bus which comes from this direction「こちらから来るバス一般」という解釈がありうるということになります。

 ではこの場合こちらなのか、というとbusについている冠詞がtheではなくaだということに注目する必要があります。「今こちらから来つつあるバス」ならばどのバスのことか相手にも特定できるはずですからtheを使う必要があります。ところがこちらから来るバス一般、つまり「こちらから来るバスならばどれでも」、ということであればどのバスが特定されませんからaを使うことになります。ですからこの文では「こちらから来るバス」という意味なのだと判断できるわけです。
 
 この点でも多くの生徒には誤解があって、英文を書く場合、後ろから限定的に修飾しているのだからtheを使ってしまいがちです。限的修飾があればtheになるのではなく、限定修飾がある場合はそこまで含めたうえで、受話者がどの名詞が特定できるならばthe、特定できないならばaを使うのです。

 たとえば、a girl whom I went out with last night「私が昨晩デートした女の子」
これで誰のことか特定されてしまっては困ります。(ストーカーか!)
 一方、the girl whom I talked about yesterday「昨日話題にした女の子」ならば「ああ、あの子のことか」と特定できるはずですね。

そして、主節動詞のgoesが現在形なのは習慣的行為を表していることは先に述べたのと同様です。動作動詞の現在形は現在の動作を表すのではなく状態的なことを表すのです。

というわけで
A bus coming from this direction goes to the station.
「こちらの方角から来るバスならどれでも駅に行けますよ」という極めて日常的な簡単なこの1文をきちんと理解するためには

冠詞(aとthe)
~ingの修飾の仕方(進行的か状態的か)
動作動詞と状態動詞のちがい
現在形と現在進行形のちがい
動作動詞の現在形が表す意味

といった文法がベースになっているのです。
このように文の理解と文法を常にリンクさせるように文法を指導することができれば、文法を勉強することの必要性を理解させることができます。

ただし、一度にたくさんのことをリンクさせすぎてはきついという学生に対しては上のうちのいくつかに絞って説明するほうがよいと思われます。あくまでも「あ、そうか。ちゃんと文法やらなきゃな。」という実感を持たせることが大切だからです。

この文の天才的語訳例を紹介しましょう。
A bus coming from this direction goes to the station.
「あ、ブスがこっちから来る、駅へ行こう」
構文はともかくbusを「ブス」 Aを「あ、」というところが天才的です。

すみません、実はこれは生徒の誤答例ではなく、私が考えた訳です。

以前、「新聞の見出しでは冠詞やbe動詞は省略されるのだぞ」と教えたあとで
Baby Killed In Bus
の意味を聞いたときに「赤ん坊がブスを殺した」という恐ろしい事件をでっち上げた生徒がいたのを思い出して作ってしまいました。


というわけで、日常レベルの簡単な文を利用して「英語を使うには文法知らなきゃね、でも理解すると丸暗記とはちょっと違って面白いかも」という実感を持たせることが英文法学習へのモチベーションにつながるのではないかと私は思います。
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プロフィール

西きょうじ

Author:西きょうじ
予備校講師歴も30年以上になりました。いろいろなことがありましたが、様々な方向へと越境しつつ自分を更新していきたいと思っています。

参考書「英文読解入門基本はここだ」「ポレポレ英文読解プロセス50」「情報構造で読む英語長文」「リーディング&ボキャブラリー」「英文速読のナビゲーター」「英文の核」「英文法の核問題演習編」
一般書「踊らされるな、自ら踊れ」「越境へ」(共著)「仕事のエッセンス」「そもそも」「星の王子様さまを英語で読もう」

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