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先日、ダイアログ・イン・ザ・ダーク(DID)というイベントに行ってきた。これは八人の客と視覚障がい者である案内人一人が一つのユニットになって真っ暗な空間の中を歩き、その中で飲食したり手をつないで歩いたりしながら、その時々のテーマについて対話をするというイベントだ。現在は不定期イベントとして開催されるのではなく、常設となっているので簡単に体験できる。(東京では外苑前にあるビルの地下に人工的な暗闇空間を作っている。)
 このイベントの日本での展開については『暗闇から世界が変わる』(志村真介・講談社現代新書)に詳しく書かれている。志村氏は私と同い年で、私の知り合いは彼と同級生だ。どうでもよいことだが、妙に親近感を覚える。自分はDID体験は二回目だったのだが、テーマもメンバーも案内人も全く異なるので飽きることはなかった。

 今回は女性四人と男性四人、私以外はみな大学生から二十代前半の若者だ。まず見知らぬ人たちと呼び合う名前をそれぞれが伝えてみなで暗闇に入っていく。杖で地面や周囲を確認しながらよちよち歩きでスタートする。暗闇の中では視覚障がい者である案内人が優位で健常者のほうが障がいを抱えているというような立場となる。中にはいろいろな仕掛けがあり、草のにおいを感じたり、かさかさという笹の葉の音を聞きとりながら、また足裏で勾配を感じながら進んでいく。途中、木でできたブランコがあって手探りでさぐりあてて乗ってみる。二人掛けることができるブランコで隣には女性が座った。女性と二人でブランコに乗るなど四十年ぶりくらいかもしれない。いや、初めてかもしれない。
 しばらく進むと今度は鉢巻きで足をつないで二人三脚状態で歩くように言われる。この状態ではコミュニケーションを取らなければ前に進めない。男女比率が偶然一対一だったので若い女性と二人三脚ができた。もう一生経験することはないだろう。互いに声も近く「前に何かがあるよ、左だよ」、とかいう声が聞こえる。このころには皆の声が明確に識別できるようになっている。また、空間の広さや狭さ、天井の高さの変化も音の反響具合で感じ取れるようになっていく。途中、みなでベンチに座って飲み物を飲みお菓子を食べながら会話をする。視覚なしに飲食すると普段食べなれたものも異なる感じになる。
 飲食しながらその日のテーマである「愛を感じるとき」について語りましょう、ということになった。これは明るい空間で素面で互いの顔を見ながら話せる話題ではない。が、暗闇だと素で語りやすいのだろう。皆それぞれに自分の思いを語る。ということは、視覚が人と人のコミュニケーションを妨げているとも言えるだろう。互いが見えない状態だと関係性がフラットになりやすいということもあるのだろうし、話すときのテレを感じずにすむということもあるのだろう。この点は今回とても強く感じた部分だ。
「愛を感じるとき」というテーマに対して参加者はみなそれぞれに、親や友人やパートナーなどに「愛されていること」「愛されていると気づいた時のこと」を語っていた。私は最後に「愛を感じるとき」と言われると、「愛される」よりも「愛する」ことがイメージされる、それは年をとったということなのかもしれないと発言した。うーむ、年をとるとgetよりgiveに向かうのだなあ…
 
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プロフィール

西きょうじ

Author:西きょうじ
予備校講師歴も30年以上になりました。いろいろなことがありましたが、様々な方向へと越境しつつ自分を更新していきたいと思っています。

参考書「英文読解入門基本はここだ」「ポレポレ英文読解プロセス50」「情報構造で読む英語長文」「リーディング&ボキャブラリー」「英文速読のナビゲーター」「英文の核」「英文法の核問題演習編」
一般書「踊らされるな、自ら踊れ」「越境へ」(共著)「仕事のエッセンス」「そもそも」「星の王子様さまを英語で読もう」

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