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消しゴム社会貢献説

 津田大介さんとの対談本の原稿から抜粋しました。ずーっと出版が延びてしまっていますが、幻の本にならないことを願いつつ…

 ~等身大から世界へ~
 20年以上前の生徒である津田さんと対談して、久しぶりに昔を振り返ってみました。昔の自分と今の自分、変化したこともあれば一貫していることもあります。生徒に対する接し方もずいぶん穏やかになったと思いますし授業スタイルも変化してきましたが、今振り返っても生徒に対するメッセージはずっと変わっていないようです。

「人の話を聞く」「恐れずに自己主張をする」「自分の頭で考えるための訓練をする」(そもそも考えるというのは技術であり、訓練していない人には考えることはできません。「思い悩む」ことと「考える」ことはまったく別のタスクなのです)「社会の中に自分を位置付ける」「自然の中の自分を知る」「自分の可能性を限定しない」「(受験において)やればできるという実感を得る」「踊らされるな、自ら踊れ」(そのまま本のタイトルに使ったフレーズです)」「想像力をもって現実と向かい合え」(「今ここ」を超越した視点の獲得と「今ここ」に働けかける行動が大切だ、ということ)などは昔の生徒も今の生徒も耳にしているフレーズです。

 自分自身の若かった頃と今の若い人を比較してみると私の周囲の若い人は概して「今ここ」を比較的受け入れて楽しんでいるなあと思うとともに「社会貢献」というフレーズをよく口にするなあ、と思います。社会貢献するためには自立できることが必要なのですが、それはともかくとして「人の役に立ちたい」という気持ちを持てるのは素晴らしいことだと思います。私などは常に社会や自分の現状にnoを突きつけるスタンスでいましたし(セックスピストルズかよ!)、「破壊」は夢想しても「社会貢献」などとは考えたこともありませんでした。自分中心にものを見ており「自分が」という主語でものを考え、「世界」「社会」は抽象的な思考対象にすぎませんでした。「社会をよくする」などと言いながら「社会」の実像をみることもなく抽象的な社会という概念を頭に描いていました。

 軽井沢という田舎に住むようになったこともあり、今では「想像力をもって思考すること」と、言語であれ仕事であれ活動の「究極の目標は隣人の笑顔」であるという考えを実感としてリンクさせることができるようになりました。ローカルな部分に実際的に働きかける行動なしには思考は空回りするばかりだとようやく気付いたわけですね。授業でも偉人の言葉をよく紹介するのですが、「社会が直面する諸問題の解決に役立たせるべく、自ら考え行動できる人間をつくること、それが教育の目的といえよう。」(アインシュタイン)「行動する人間として思考し、思考する人間として行動せよ。」 (アンリ・ベルグソン)といった言葉は突き刺さってきますし学生に訴えかける力もあるようです。
 
この対談で「リーダー」について津田さんから質問されたのですが、自分が行動することで他人に何らかの行動を促せる人といった意味のことを答えました。日本には「リーダーを待つ」という風潮があります。「ニューリーダー待望」などというのはよく目にするフレーズですが、リーダーを待つあり方そのものが自分の可能性を放棄し「誰かにお任せ」したい無責任な社会を生み出してしまっているのでしょう。私のいう意味のリーダーにならば誰もがなれるはずです。

わたしの「消しゴム社会貢献説」を紹介します。と言っても普通のことを日常化してみただけですが…
たとえば、教室で消しゴムを忘れた同級生がいるとしましょう。その子が困った様子をしているのを見て笑顔で消しゴムを貸してあげる。困った時に人にものを頼むのは難しいもので「消しゴム貸して」の一言も言いにくいものです。
その子が「ありがとう、借りた分返すね」と言って使った分の消しゴムのカスを返す、なんてことはないでしょう。使った分の消しゴムは返せません。もちろん貸した側も貸した分のカスを返せ、とは思っていません。ここが消しゴムのポイントです。

しかし、借りた人はその後に別の子が消しゴムを忘れたのを見るとすすんで消しゴムを貸してあげようと思うようになるかもしれません。このとき1対1の閉じた貸借関係が開かれ始める。そのうちにそれが広がり教室全体が困っている級友に手を差し伸べるようになっていくかもしれません。そうなっていくと初めに消しゴムを貸したのが誰であるかはもはや問題ではなくなりますが、さっと消しゴムを貸してあげた人はリーダーとしての役割を果たしたことになりますよね

 級友に消しゴムを貸してあげるというようななんでもない行動が社会をよくするきっかけになりうるのだということなのです。 そんなリーダーには誰でもなりえますし、そこにはヒロイズムはいらないし、リスクを伴うこともありません。
 そういうところから社会貢献への可能性が生じるのですね。「社会貢献」という言葉を抽象語にしてしまわないことは重要だと思います。まずは隣人に頼まれる前に問題を察して消しゴムを貸してあげることから始めましょう。
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Re: タイトルなし

私も憲法改正には反対です。憲法を改正するということ自体ではなく、今改正しようとしている人たちの思惑が危険だからです。「日本人は民主主義を捨てたがっているのか」(岩波ブックレット)一読をお勧めします。

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予備校のとき、西先生から英語習っていました。
最近、ふと先生どうしているかと思ってたらブログ見つけました!
更新が止まっているので悲しいです~。
仕事忙しいかもしれませんが、なんでもいいので、かいてください!
プロフィール

西きょうじ

Author:西きょうじ
予備校講師歴も30年以上になりました。いろいろなことがありましたが、様々な方向へと越境しつつ自分を更新していきたいと思っています。

参考書「英文読解入門基本はここだ」「ポレポレ英文読解プロセス50」「情報構造で読む英語長文」「リーディング&ボキャブラリー」「英文速読のナビゲーター」「英文の核」「英文法の核問題演習編」
一般書「踊らされるな、自ら踊れ」「越境へ」(共著)「仕事のエッセンス」「そもそも」「星の王子様さまを英語で読もう」

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