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過度な単純化と有効性について


「過度な単純化」の有害性については「英文法の核」の中でも取り上げました。
そこでは「他動詞はほかに働きかける動詞です⇒具体例⇒わかりやすいですよね。」というような記述について、状態動詞への意識が抜けていることを指摘しました。He resembles his father.は他動詞ですが、彼が父親に働きかけているわけではない、と。これは普通に見かける文なので例外扱いはできません。過度な単純化によって理解した気になっていると、このような普通の文に対処できなくなるので、過度な単純化は学習者にとって「わかりやすい」というよりはむしろ有害なのだと書きました。
 自動詞と他動詞については本書0章で説明してあります。

 また、ツイッターで「現在形とはいつでもいえることを表す」のではないか、という質問がありました。この過度な単純化はI am hungry.という一文を瞬間考えるだけで打ち砕かれます。「私はいつでも空腹」なのか?

 ここでも動作動詞と状態動詞の区分があれば、動作動詞の現在形は現在を含めた一定期間以上にわたって言えること、あるいは確定的な未来を表し、状態動詞の現在形は現在を含めた一定期間以上にわたって言えることと説明がつきます。(一定期間は長くても短くてもよい。参考書ではShe is pretty.この先もしばらくはprettyというイラストを入れました)
 
 少し回りくどいように思えますがこのあたりが適切な説明の落としどころかと思います。「現在形とはいつでもいえることを表す」と書いている参考書があるとすればやはりそれは有害なものだと言えるでしょう。

 また、これまで自分が学んできた、あるいは教えてきた説明と異なる説明を目にして「わかりにくい」という人もいました。「わかろう」という視点で読んでいないからでしょう。それは教職者に多いようです。教師は往々にしてこれまでの自分の教え方に固執してしまいがちなものです。「変化」できないものは生き残れないのだとダーウインも言っていますが、自分の判断をさしおいて、とりあえず素直に受け入れてみる、その上で自分の考え方や教え方を改善していく、という姿勢が教える側に必要だと思います。これも「これまで」だけを基準にしてものを判断するという過度な単純化だと言えるでしょう。言語自体も常に変化し続けるものですから、言語を教えるものは常にアップデートし続ける必要があります。

 ところが、「過度な」という言葉を使うからには「適度な」を想定する必要があります。
たとえば小学生に英語を教える際に「現在形とは」という教え方をするとすれば、その段階で「過度」だということになります。その段階ではパターンの反復によって無意識に体得させることの方が多いはずだからです。

 実はこの「適度」が一番難しいところなのです。どこまで説明するか、何は説明から省くか。大学受験生に講義をする場合は「何を教えないようにするか」という制御があってこそ有効性の高い講義となります。教える側は、ついいろいろと教えたくなりますが、情報が多すぎると「核」がぼやけてしまうことになりますし、消化不良を起こしかねません。「適度」とは、という問いは対象、状況によって答えが変わり続けるものなので状況を判断し続ける姿勢が必要になるのです。

 話は変わりますが、「論理的に思考し論理的に読み書きすること」はとても重要なことで、特に日本人の思考パターンと異なる要素が多いので私の講義では徹底的に「論理性」にこだわります。しかし、論理性というのはいわば一つの思考の型であって、共有する人の数が多く、また科学的にも有効性が高いから重視されているものにすぎません。そこでは線形に進行することが求められますが、文字を持たない言語を使う人たちは線形に進行する思考はとりません。「進行」しないでそのままに対象(環境や他の人)とダイレクトに接しているのです。(「声の文化と文字の文化」と「ピダハン」はとても面白いです)さらにいうと「非線形」に進行する思考もあり得ます。線形にするためにそぎ落とすノイズの部分が実は重要な要素であって、近代合理主義のような還元主義的思考では説明不能な現象もあるというわけです。(「非線形科学」という新書もとても面白いです。)
 ですから「論理的に考えろ」という言葉自体も状況次第では「過度な単純化」と言えるのです。しかし、論理の枠に収まらない現象を説明するためにも、論理の枠内に収まる言語が必要になりますから、「論理的に思考する」ことは有効性の高い手段となります。
 「適度に単純化」する手段をとって理解しながら、その「単純化された理解」の外部が常に存在しているのだと意識することが必要なのでしょう。
 





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プロフィール

西きょうじ

Author:西きょうじ
予備校講師歴も30年以上になりました。いろいろなことがありましたが、様々な方向へと越境しつつ自分を更新していきたいと思っています。

参考書「英文読解入門基本はここだ」「ポレポレ英文読解プロセス50」「情報構造で読む英語長文」「リーディング&ボキャブラリー」「英文速読のナビゲーター」「英文の核」「英文法の核問題演習編」
一般書「踊らされるな、自ら踊れ」「越境へ」(共著)「仕事のエッセンス」「そもそも」「星の王子様さまを英語で読もう」

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